96.03.25・・・電池の仕組み
96.01.08・・・防水の仕組み
95.11.20・・・液晶とはどういう仕組みですか
95.11.06・・・石けんで汚れが落ちるのはなぜ
95.09.25・・・超伝導を分かりやすく教えて下さい
95.09.18・・・ホタルのおしりは、なぜ光るのですか
95.09.04・・・紙オムツはなぜあんなにたくさんのオシッコを吸収するのですか
96.03.25
96.01.08
95.11.20
質 問:液晶とはどういう仕組みですか
回 答:栗原清二(熊本大学工学部応用化学科)
デジタル時計や小型テレビ、コンピューターなど、液晶ディスプレイは様々な「表示装置」として使われています。「液晶」とは、外見的には液体にもかかわらず結晶(固体)の性質を持つ特殊な材料です。一字ずつとって、その名前が付いています。液晶分子は細長い形をしています。分子の縦(長軸)と横(短軸)とでは、光の屈折率など物理的性質が異なり、分子の並び方によって、液晶に入射した光の方向が変化します。この性質を利用し、液晶分子の並び方を電圧で変化させると、「明」と「暗」の状態が作れます。これが、文字や絵などを表示する液晶ディスプレイの原理です。
図に、その仕組みを簡単に示しました。液晶層は二枚の偏光フィルターに挟まれています。偏光フィルターとは光の“ふるい”のようなもので、一定方向に振動する光だけ通過できます。二枚の偏光フィルターを重ね、片方を九十度回転させると、そのままでは光は通過できません。
偏光フィルターに挟まれた液晶層の分子は、横向きになって重なり、上と下が九十度ねじれるような“配向処理”がなされています。こうすると、最初の偏光フィルターで“ふるい”にかけられ、縦方向だけの振動となった光は、液晶層のねじれに導かれて九十度ねじれ、二枚目の「横向き」フィルターを通過します。裏側から見ると「明」の状態です。
次に、その液晶層に電圧をかけます。すると液晶分子の並び方が変化し、垂直に立ったように並びます。これでは光のねじれはなくなり、二枚目のフィルターを通過できません。「暗」の状態です。
この「点」を縦横に何十、何百と並べ、電圧を加えたり除いたりして「明」「暗」をコントロールするのが液晶表示の原理です。
液晶層の厚みは一ミリの百分の一程度、ディスプレイ全体でも数ミリと薄く、消費電力が少ないなど多くの特徴があります。ブラウン管などと比べて、飛躍的に薄いディスプレイができるわけです。
液晶には、一つ一つを正確に作動させるなど、解決しなければならない技術的問題も残されていますが、家庭に壁掛けテレビが登場する日もそう遠くないかもしれません。
95.11.06
質 問:石けんで汚れが落ちるのはなぜ
回 答:伊原博隆(熊本大学工学部応用化学科)
衣服や食器の油汚れを、水で落とすのは大変です。下手に洗うと、かえって汚れが拡がります。これは、水と油が混ざりにくいために起こる現象です。それでもなんとかして油汚れを落としたい−。せっけんや洗剤は、こうして発明されました。まず、ドライクリーニングでは、なぜあんなに油汚れがよく落ちるのでしょうか。ドライクリーニングの主役は水ではなく、テトラクロロエチレンやトリクロロエタンのような化学的に合成された液体です。これらの液体は水とは混じり合いませんが、逆に油とはよくなじみます。油汚れはこれらの液体に簡単に溶けるので、洗剤を使わなくても油汚れを洗い落とすことができるのです。これで「油汚れを落とすには、油とよくなじむ液体を使う」ということが分かります。洗剤の秘密もここに隠されています。洗剤の主役は界面活性剤(図)です。界面活性剤は、水とよくなじむ「親水部」と油によくなじむ「親油部」の両方を備えた、面白い分子構造をしています。そして水に溶かすと、まるで親油部を水から守るように集まり、親水部がその周りを取り囲みます。これをミセルと呼びます。ミセルは千分の一ミリ以下の大きさで、肉眼では見えません。水の中でミセルができればしめたもの。その内側は油によくなじむ親油部が集まっているため、油汚れを吸収します。こうして、洗剤を使うと水で油汚れを落とせるのです。
汚れ成分は油だけとは限りません。泥汚れの場合には、衣類をもんだりたたいたりすることも重要です。洗剤にはこのほか、タンパク質を分解する酵素、白さを引き立たせる漂白剤などがまぜられ、様々な効果が出るように工夫されています。
最後に界面活性剤についてもう一言。実はマヨネーズ、チョコレートなど、いろいろなものに使われています。このような用途で使われる界面活性剤は「乳化剤」と呼ばれ、分離する油脂と水分を混ぜる“つなぎ”の役目を果たします。
95.09.25
質 問:超伝導を分かりやすく教えて下さい
回 答:松本泰道(熊本大学工学部応用化学科)
超伝導とは、言葉の通り“極端に電気が流れやすい”現象。つまり、電気抵抗がゼロの状態です。ある種の金属などは絶対零度(約−273・2°C)に近い低温で、急に電気抵抗がなくなる現象が知られています。銅線だって抵抗は少ない? 確かにそう思えますが、リニアモーターカーを浮かせるような強力な電磁石を作るとします。電磁石の強さは、巻き線の数と流す電流に比例するため、強い磁力を得るにはできるだけ多く巻いた線に多くの電流を流す必要があります。しかし、これに銅線を使うと、銅線の抵抗で発熱したり、大電力(大エネルギー)を必要としたりして好ましくありません。この巻き線に超伝導体を使用すると、巻き線の抵抗がないため大電流を流せ、強力な磁力が得られます。抵抗ゼロ=電力もゼロで、莫大な省エネルギーにつながります。では、どうして超伝導が起きるのでしょうか。電気が金属を流れるのは、金属の中を電子が自由に移動するからです。その電子が原子と互いに影響を及ぼし合ったりして「抵抗」が生まれます。しかし、極端な低温では電子が二個ずつの「組」を作った特別な動きをし、原子などの影響=抵抗を受けなくなります。超伝導をおおまかに説明すればこうなります。超伝導体は抵抗ゼロのほかにも、マイスナー効果(磁力に反発するため、磁石を浮かせるたりする現象=写真)を利用した様々な用途が考えられています。
従来、超伝導は−250°C近い低温でしか起きませんでしたが、最近、銅と幾つかの金属からなる複合酸化物がおよそ−150°Cで超伝導体になることが発見され、世界中でこの研究が盛んに行われています。もちろん低温にはかわりなく、液体チッソで冷やす必要があり、簡単には取り扱えません。もし、室温でも超伝導を示す材料が発見されたら…。新しい物質の発見で、少しずつ超伝導になる温度は上がってきており、夢が実現する日も遠くないかもしれません。
95.09.18
質 問:ホタルのおしりは、なぜ光るのですか
回 答:栗原清二(熊本大学工学部応用化学科)
話を分かりやすくするために、まず“ホタルの光”と書く、蛍光物質から説明します。
わずかな光のもとでも輝いて見える蛍光物質は、私たちが普通に物を見る時のように光の「反射」だけでは説明できません。その仕組みはこうです。蛍光物質に光を当てると、物質内の電子がエネルギーをもらい、エネルギーの高い状態(励起状態)に押し上げられます。この状態は長続きせず、やがて元の状態(基底状態)に戻っていくのですが、この時、余分なエネルギーを光として放出します。このような現象が蛍光物質の「発光」です。
最近では、黄色やピンクなどのカラフルな色彩で光っているように見えるスキーウエアなども人気があるようですが、これは繊維に同じような仕組みで発光する色素が含まれているからです。ホタルが闇(やみ)の中で明るく光るのも基本的には「発光」によるものですが、蛍光物質が光を吸収して励起状態となり発光するのとは、少し仕組みが違います。
ホタルの光の“カギ”を握っているのは、ルシフェリンという生物発光に関係する物質です。このルシフェリンがルシフェラーゼという酵素で酸化される時に、この化学反応によって励起状態が生じ、この状態からの発光が、ホタルが光る理由です。化学反応で励起状態が生じ、そこから基底状態に戻るときに光を放出する現象を「化学発光」と呼びます。ちなみに、ホタルの光は種類によってずいぶん色が違います。例えば、ゲンジボタルは青緑色ですし、アメリカホタルは黄色、ヒメボタルは白っぽい光を出します。これはルシフェラーゼ酵素あるいは、酵素内の生体環境が種類によって微妙にことなるためだと考えられています。
ホタルはその発光色だけでなく、発光パターンも種類によって異なっていることが知られています。じっさいに、あるパターンで光の明滅を人工的に行うと、雄ホタルが誘因されることが実証されています。これは光フェロモンともいえるもので、昆虫のフェロモンが種により異なるように、ホタルも発光色や発光パターンの違いで、雌雄の交信をしているといわれています。
95.09.04
質 問:紙オムツはなぜあんなにたくさんのオシッコを吸収するのですか
回 答:伊原 博隆(熊本大学工学部応用化学科)
日本で紙オムツが使われ始めてから、30年になります。最初の紙オムツは、パルプの綿をポリエチレンやレーヨンなどから作った不織布(織らずに繊維を押し固めて作った布)で挟んだものでした。オシッコの吸収量はコップ2杯分(400g)もあったのですが、オムツを押さえるとすぐにオシッコが漏れ出てしまう難点がありました。
今から13年前、高吸水性樹脂を使った画期的な紙オムツが発売されました。この紙オムツには一枚当り5g程度の高吸水性樹脂が入っていて、オシッコの吸収量はコップ4杯分。今ではさらに性能が向上し、薄型でも5杯分はしっかりと捕まえます。
では、高吸水性樹脂とは??。紙オムツに使用されているものは、食品の粘性を高める添加物などとして使われる水溶性のポリアクリル酸ソーダを原料にしたものが一般的です。これを特殊な方法で水に溶けないように加工すると高吸水性樹脂に変化し、1gで普通の水ならコップ4杯分(800cc)、オシッコでも60〜80ccを吸収します。
吸水の原理は「ナメクジと塩」に隠されています。ナメクジに塩をかけると、小さくしぼんでしまいます。これは、ナメクジの体の膜が水分を良く通し、体内の水が塩側に移動するからです。膜の内側と外側の塩の濃さを同じにしようとする「浸透圧」が関係しています。高吸水性樹脂も塩の一種。水には溶けませんが、もともと水が大好きな物質で、オシッコの水を吸い込んで膨らみます。一度吸収された水は、オムツを押さえたぐらいでは後戻りしません。
では、質問。オシッコをたっぷりと吸収した紙オムツに塩をかけるとどうなるでしょうか。
高吸水性樹脂のおかげで最近の赤ちゃんはオムツかぶれが減ってきているようです。お母さんも大助かりですが、はき心地が良いせいかオムツ離れが悪くなった? なんてことも耳にしますね。