ポリカチオンリポソームによる遺伝子導入とその機構
奥 直人(静岡県立大学・薬学部)
非ウイルス系遺伝子導入システムとして、カチオニックリポソームやポリカチオンが用いられている。我々は両者の利点を生かし、リポソームをポリカチオンで修飾したポリカチオンリポソーム(PCL)を開発した。本講演ではPCLによる遺伝子導入の詳細とその機構について考察する。PCLは、ポリエチレンイミン(PEI)にアルキル基を導入しリポソーム膜を修飾することにより調製した。インビトロ系ではPCLによる遺伝子導入発現効率は従来のカチオニックリポソームに比べ高く、また細胞毒性が低いこと、血清存在下で活性上昇が見られることが明らかとなった。またPEIのプロトンスポンジ効果のために、ヘルパー脂質としてPEを必要とせず、安定性の高いDPPC/コレステロールリポソームでも十分に有効であることが明らかとなった。また種々の細胞系への遺伝子導入が可能であった。PEIの分子量としては600および1800のものに高い活性が見られたが、分子量25000のものはリポソーム化に適さないことも明らかとなった。次にPCLによる遺伝子導入の機構解析のために、プラスミド、ポリカチオン、およびリポソーム脂質をそれぞれ蛍光標識し、共焦点レーザー顕微鏡で観察した。その結果DNAはリポソームと共にエンドソームに取り込まれ、核にはDNAとポリカチオンの複合体の形で移行することが示唆された。さらにインビボ系におけるPCLによる遺伝子導入を検討した。PCLの尾静脈内投与では肺で、門脈内投与では肝臓で高い遺伝子発現が見られた。これらのことよりPCLは、インビボ応用も可能な遺伝子導入システムとして有効であることが示唆された。