講演会のご案内
主 催:熊本大学21世紀COEプログラム

共 催:熊本大学「超分子・超構造科学フォーラム」、応用物理学会九州支部、日本金属学会九州支部

日 時:平成18年 3月10日(金) 10:30 〜 12:00

会 場:熊本大学インキュベーション施設 1F、リエゾン会議室

講演者:岡安 悟 (独立行政法人日本原子力研究開発機構、先端基礎研究センター)

題 目:高温超伝導体の照射効果

講演要旨:
 高温超伝導体の磁束状態が、温度・磁場によって実にバラエティ豊かな変化を示すことはよく知られている。その原因の一つとして、まず動作温度が高いことが挙げられる。そのため熱揺らぎの効果が磁束状態に大きく効いてくる。またコヒーレンス長が短いため臨界磁場が高く、高い磁場まで超伝導が壊されない。そのため磁束間の相互作用が大きく変化することが可能となっていることも一因である。また、超伝導特性の異方性が大きく、c軸方向における磁束量子の相関が従来超伝導体比べ著しく小さい。そのため従来超伝導体でみられた一次元的な紐状の磁束量子という描像は高温超伝導体では成り立たない。c軸方向には、CuO2面上に乗った薄いパンケーキを積み上げたようなモデルが適当であると考えられている。c軸方向にパンケーキ磁束同士はゆるく結合をしているだけのため、容易に面間の組み替えが起こり磁束状態の複雑さの原因となっている。こうした磁束状態を調べていく上で、温度と磁場だけをパラメータにするのは十分ではない。磁束量子間の相互作用も磁束状態には重要だからである。磁束量子間の相互作用はピン止め中心を導入することである程度の制御が可能である。ピン止め中心の導入方法のひとつとして、粒子線の照射がある。特に重イオン照射によって高温超伝導体に導入される円柱状欠陥は、ばらばらになりやすいパンケーキ磁束を欠陥に沿って揃えるため、c軸方向の相関が回復し、ピン止め力が大きく改善する。こうした高温超伝導体への照射効果について重イオン照射を中心にお話しする予定である。