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層状酸化物によるNO吸蔵と浄化反応の開発

NOxを吸ってN2を吐く層状化合物

 排ガス中に含まれる希薄窒素酸化物NOxと特異的に反応し、高速に吸蔵する多くの無機固体材料を開発した。特に、層状銅系酸化物へのNOxインターカレーション反応を独自に発見するとともに、デインターカレーション過程では層間NOxが一挙に分解・放出される現象を見い出し、層間反応によNOx浄化法を提案した。本反応を吸着状態、気相固相反応、結晶構造変化に着目して解析し、反応機構を解明するとともに、化学組成・結晶構造との相関を明らかにした。さらに、温度スウィングによって本反応を動的に繰り返す全く新しいNOx分離浄化プロセスを実現した。本研究の結果に基づいて、インターカレーションの物質変換法としての展開を指向した研究を進めている。

 層状化合物以外にも、蛍石型構造を基本としたNOx吸着材料を開発し、触媒機能との複合化による低温NOx除去および浄化法の開発も進めている。

関連発表論文

NOx取り込みを原子レベルで見る

 層状銅酸化物はまず水蒸気と反応して層と層との間隔が拡がる。これは、層と層との隙間(左の写真の白い横縞)に水酸基が挿入されたためと考えられる。さらにNOと反応すると層の重なりは大きく歪みさらに大きな拡張が観察される。NOはNO2イオンのような形で層と層の隙間に存在すると考えられる。

一番左の写真で層と層との隙間は約1nm(十億分の一メートル)。黒い点一つが原子一個に対応する。

取り込んだNOを分解して放出

 左の図はNOを取り込んだ試料を加熱したときに放出される気体を調べた結果を示している。層と層との間に取り込まれたNOは200〜400℃ではそのまま放出されるが、500℃以上ではO2、そして800℃以上ではN2を放出する。つまり取り込んだNOを分解して放出する。

 この反応を利用して、低温でNO吸収除去、高温で分解放出を繰り返すことが可能になった。このような層空間を利用した反応は、NOxの除去と浄化に限らず全く新しい層状化合物の応用分野である。

 われわれはこのような「層間反応」の開拓と応用研究をさらに進めている。