伊田研究室・津川 樹さんが第14回CSJ化学フェスタ博士オーラル賞および優秀ポスター賞をダブル受賞しました!
~津川さんによる受賞内容の説明~
研究題目「Pore-free酸化グラフェンの合成とプロトン伝導特性」
酸化グラフェン(GO)は、炭素と酸素原子からなる二次元材料で、シート表面に多種の酸素官能基を有するため、多くの溶媒に高い分散性を示します。このGO分散液を用いて容易に多様な形状に合わせた積層膜を作製できるだけでなく、高い柔軟性・機械的強度、高アスペクト比など、ガスバリア材料に向けた優れたポテンシャルを持ちます。しかしながら、従来用いられてきたGO面内には多くの孔が存在するため、結果的にGOのバリア性はグラフェンよりも圧倒的に低いことが知られています。特に水素イオンを高速に伝導する性質があり、イオンバリア膜としての使用は困難でした。本研究では、構造内に「孔」を持たないGO(Pore-free GO)を合成し薄膜化することで、これまでの酸化グラフェンの常識を覆す水素イオンバリア膜の開発に成功しました。今回開発した酸化グラフェン膜は従来の膜と比較して最大10万倍の水素イオンバリア特性を示し、厚さ数100 nmのコーティングでリチウム箔を水滴から守ることに成功しました。また、本研究の結果から、水素イオンは酸化グラフェンの「孔」を介して移動していることを明確に示しました。このようなGOは全く新しい二次元炭素材料と考えるべきであり、今後カーボン関連材料の研究開発を一層発展させることが期待されます。これらの内容を第14回CSJ化学フェスタ2024にて博士課程学生オーラルセッションとポスター発表で報告し、ダブル受賞しました。