お知らせnews

栗原研究室・Ashkan Mokhtar君の研究が論文掲載されました!

栗原研究室・深港グループ・Ashkan Mokhtar君(博士前期課程1年生)の研究がACS Materials Letterに掲載されました!

我々の研究室は光機能性材料を主に研究しています。光機能性材料とは光を外部刺激として様々な特性を示す材料のことです。その材料の中で我々の研究室では特に、光により材料の特性を選択的かつ可逆的に変化させる“光スイッチング分子材料”を中心に研究を進めています。私の研究テーマでは近年多くの研究者の注目を集めているペロブスカイト型量子ドットに光スイッチング特性を付与することを目的としています。ペロブスカイト型量子ドットは優れた発光及び電気特性を示し、その応用はメモリ、ディスプレーやバイオイメージングなどの分野で期待されています。しかしながら、このような分野への応用のためには、①量子ドットの安定性を向上させる、②発光特性を選択的かつ可逆的にスイッチングさせる、という2つの課題を同時に満足する必要がありました。その課題に対して私は、量子ドットの安定性を向上させるための手法であるコーティング法に着目し、材料の表面をコーティングできるトリエトキシシランというユニットを光スイッチング機能を有するフォトクロミック化合物であるジアリールエテンに組み込んだ分子を合成しました。この分子を用いれば、コーティングの段階で光スイッチング分子がコート層に取り込まれるため、先に示した『安定性』と『光スイッチング特性』という2つの課題を同時に解決できるのではないかと考えました。

このような考えをもとに、この分子を用いてペロブスカイト型量子ドットのコーティングを試みたところ、きちんとジアリールエテンが複合したペロブスカイト型量子ドットを作製することに成功しました。ジアリールエテンは紫外線の照射によって反応を起こし着色します。そこに可視光を照射すると元の状態に戻る光応答性分子です。このジアリールエテンを取り込んでコーティングされたペロブスカイト型量子ドットは、紫外線を当てる前は強い発光を示しますが、紫外線の照射によりジアリールエテンが着色体に変化すると、ほとんど発光が出なくなることがわかりました。また、そこに可視光を照射すると、再びペロブスカイト型量子ドットの発光が回復してきました。このようなスイッチング挙動は繰り返し行うことができることから、ペロブスカイト型量子ドットの安定性も向上していると考えられます。この特性を利用することで、以下の図に示すような、光によるガラス基板上への可逆的な発光パターニングなどが可能になります。将来的には、このような分子材料を光メモリ、セキュリティーインクおよびバイオイメージングなどに応用していきたいと考えており、さらなる研究に取り組んでいます。