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大気からの直接CO2回収のための分離膜の開発 ~温室効果ガス削減へ~

産業ナノマテリアル研究所の國武雅司教授(工学部化学系)が、九州大学カーボンニュートラル・エネルギー研究所(I2CNER)の藤川茂紀准教授を代表とする「ムーンショット研究プロジェクト」のメンバーに選ばれました。我が国発の破壊的イノベーションの創出を目指し、大胆な発想に基づく挑戦的な研究開発を推進する政府主導の大型研究プロジェクトのひとつです。

ムーンショット(Moonshot、月を撃つ)は、米国ケネディ大統領の「1960年代が終わる前に月面に人を立たせ、無事に地球に帰還させる」という極めて挑戦的な宣言とそれを実現させたアポロ計画に由来し、極めて困難であるが実現すれば、大きく社会を変えうるインパクトをもたらす壮大な挑戦を意味する言葉として使われます。

地球温暖化を回避するためには、温室効果ガスである二酸化炭素(CO2)排出削減だけでなく、大気中にすでに排出されてしまっているCO2も削減する必要があります。本プロジェクトは、大気からのCO2直接回収技術とさらに集めたCO2から燃料を作り出す技術の開発によって環境への負担が少ない全く新しい循環型エネルギーシステムを生み出そうとするものです。

その中で、熊大チームは九大や他大学と協力して、大気からCO2だけを選択的に通す非常に薄いポリマー薄膜の開発研究にチャレンジしています。ここでいう膜とは、エアーフィルターのようなものです。この技術は他の大掛かりな技術と異なり、場所やサイズを選びません。大きなエネルギーも必要としません。家庭用クーラーサイズの装置が開発できれば、各家庭でCO2を回収し、そのまま燃料とするエネルギーの地産地消(その場で生産、その場で利用)が可能になると期待されています。しかし窒素や酸素など、様々な気体分子から成る空気中に0.04%しかいないCO2を通すだけで回収可能な透過膜の開発は極めて困難な課題です。エネルギー問題、環境問題を解決し、日々の生活、社会構造を根本から全く変えるような夢の材料開発を目指して挑み続けています。

産業ナノマテリアル研究所・國武雅司教授(工学部化学系)