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井原研究室・千々岩 風音さんが表彰されました!

井原研究室・千々岩 風音さんが第60回化学関連支部合同九州大会で九州分析化学ポスター賞を受賞しました!

 

~千々岩さんによる受賞内容の説明~

研究題目「抗EpCAMアプタマー修飾金フィルターによる血中循環腫瘍細胞の可逆的捕捉」

がん患者の血液中には、原発腫瘍組織から剥離し血液の流れに乗って全身を循環するがん細胞(血中循環腫瘍細胞、Circulating Tumor Cell:CTC)が存在しています。血液1 mLあたりにおよそ50億個の血球細胞が存在するのに対し、CTCはわずか数~数十個しか存在しません。そのため、CTCの検出は容易ではなく、前処理としてCTCを濃縮する工程が必要となります。多くの固形がん種の細胞膜上にはEpCAMと呼ばれる膜タンパク質が高発現しています。本研究では、これを認識する素子としてEpCAMと特異的に結合することが可能なDNAアプタマーに着目しました。また、細胞捕捉の基体として、流体の圧力に応じて開口する金フィルターを用いました。同フィルターに抗EpCAMアプタマーを修飾することで、物理的選別と化学的選別の二つの要素により、がん細胞が選択的に捕捉されることを期待しました。作製したフィルターにがん細胞としてMDA-MB453(ヒト乳がん細胞)を、正常細胞としてHEK-293T(ヒト胎児腎細胞)の懸濁液を通液したところ、正常細胞はほとんど捕捉されず、がん細胞が選択的に捕捉されることがわかりました。また、がん細胞が捕捉されたフィルターに同アプタマーの相補鎖を添加することで、がん細胞を容易かつ高収率で回収することにも成功しました。回収したがん細胞は、ゲノム解析や薬剤のスクリーニングなどに応用できます。将来的にはがんの診断や個別化医療へ発展していくことが期待されます。