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2.超臨界流体の抽出・反応溶媒としての特性

(1) 超臨界流体の特性

 超臨界流体は臨界温度および臨界圧力を超えた非凝縮性高密度流体と定義される。超臨界流体として抽出プロセスでは無害で安価な二酸化炭素(臨界点:31℃、7.38 MPa)が用いられることが多いが、反応溶媒としては水(臨界点:374℃、22.1 MPa)が有効である。超臨界流体は次のような特徴を有している。密度が液体に近い状態から気体に近い状態まで連続的に変化するため、抽出溶媒あるいは反応溶媒としての特性を圧力と温度による容易に制御できる。優れた輸送物性(低粘性、高拡散性)を有している。溶媒和の効果により、大きな反応速度が得られる2)。さらに、水は超臨界状態において通常の水とは異なる次のような特異な性質が現れる。密度に加え溶解特性に係わる重要な因子は誘電率であり、通常の水の約80から500℃では約2と小さくなるため、水は非極性物質の性質を示し、非極性有機物質に対する良好な溶媒となる。逆に無機物の溶解度は激減するため無機物の析出が起こる。超臨界流体は酸素などの気体と任意の割合で単一相で混合するため、均一相で反応が進行する。

(2) 抽出溶媒

 圧力の制御により物質の溶解度を大幅に変化させることができるため、1種類の溶媒で多種類の液体溶媒に匹敵する溶解力を持ちうるため、分離プロセスの簡略化が可能になり、また、二酸化炭素や水などの環境負荷のない溶媒を用いた抽出プロセスが可能となる。

(3) 酸化反応

 これらの特徴を活かして超臨界水中で酸化反応を行うと、有機物が溶解し、酸素などの気体も均一相で存在するため、反応速度が速く、有機物はほぼ完全に二酸化炭素と水に酸化される。超臨界水プロセスは高温高圧であるため装置コストが高くなるが、反応が非常に速いため、反応器を小型化でき、また、原料中の炭素分が2%以上あれば自己の酸化熱で反応温度を維持できるためエネルギー的にも有利である3,4)

 超臨界水酸化における反応は表1に示されるようにほとんどの有機物が水と二酸化炭素に酸化され、ヘテロ原子を含む場合も塩基性物質を添加して塩として分離できる。超臨界水中での有機物の酸化分解の結果の一例3)表2に示す。PCBなどの難分解性の物質も含めて極めて短い時間で非常に高い分解率が得られている。

(4) 加水分解

 超臨界水の密度の増加につれて、水分子のイオン反応への寄与が大きくなり、加水分解反応速度が大きくなる。そのため、バイオマスから化学原料の回収やポリエーテルやポリエステルのような脱水縮合ポリマーの分解・モノマー回収の方法として注目されている1)