お知らせnews

粟屋 恵介 助教が受賞されました!

粟屋 恵介 助教がThe 37th International Korea-Japan Seminar on CeramicsでYoung Ceramist Award(Best Oral Presentation)を受賞しました!

 

~粟屋 助教による受賞内容の説明~

研究題目「Mechanochromic Photoluminescence of Bi3+, Ln3+-doped (Ln = La, Eu, Tb, Sm, Dy) Aurivillius Perovskite Nanosheet」

Aurivillius(オーリビリウス)型層状ペロブスカイトは、厚さ約1 nmのペロブスカイト層(An-1BnO3n+12-)と酸化ビスマス層(Bi2O22+)とが交互に繰り返し重なった結晶構造を有しています。このうち、ペロブスカイト層一枚分を剥離して得られたシート状の物質を『ナノシート』と呼んでいます。ナノシートは、厚さ約1 nm・横サイズ数μmという特殊な構造ゆえ、通常の材料とは異なる物理的・化学的性質を示すことから、触媒をはじめ、光学材料、エネルギー貯蓄材料、イオン伝導体、防錆コーティングといった幅広い分野への展開が期待されています。

Aurivillius型層状ペロブスカイトから得られたナノシートの特徴の一つとして、酸化ビスマス層中のBi3+がペロブスカイト層のAサイトに一部占有することが挙げられます。ここのナノシートに紫外光(UV)を照射すると、Bi3+の電子遷移に伴い青~緑色の光を放出します。Bi3+による発光色は、ビスマス周囲の環境(pH・イオン濃度・温度・応力等)変化に応じて敏感に応答するため、各種光学センサーとして研究されています。

本研究では、Aurivillius型層状ペロブスカイトの一つBi2.4Na0.5Ln0.1Ta2O9 (Ln: ランタノイド)よりBi0.4Na0.5Ln0.1Ta2O72-ナノシートを合成し、その発光特性について報告しました。Bi0.4Na0.5Ln0.1Ta2O72-ナノシートは、Lnに入るランタノイドの種類により、UV照射下において赤色(Eu3+)、緑色(Tb3+)、青色(La3+、ただし発光中心はBi3+)を示すマルチカラー発光体となります。また、同報告ではBi0.4Na0.5Eu0.1Ta2O72-ナノシート膜を機械的に曲げると、その曲率半径の大きさに応じてBi3+の発光波長が変化することを発見しました。この性質により透明材料内部の微細な応力を可視化できるため、将来的にはガラスやプラスチック材の経年に伴う構造劣化のモニタリングに応用できる可能性があります。