栗原研究室・深港グループ・石田沙奈恵君（博士後期課程2年生）の研究がChem. Communに掲載されました！
～石田さんによる論文の説明～
我々の研究グループでは、光により可逆的に色を変化させるフォトクロミック分子と蛍光色素を連結することで、光により可逆的に蛍光特性（蛍光の強さや色）を制御できる高効率な蛍光スイッチング分子の設計・合成開発に関する研究を進めています。
本研究では、このような蛍光スイッチング分子の単結晶を作製することに成功し、一般的に難しいとされてきた高コントラストな蛍光スイッチングをわずかな光反応で達成できることを明らかとしました。この単結晶はきれいな緑色の蛍光を発しますが、紫外光が照射されると瞬時にその蛍光が消えて光らなくなります。その状態に可視光を照射すると緑色の蛍光が再び観測されるようになります。このような高コントラストな蛍光スイッチングが観測されるのは、紫外光照射により着色した閉環体（クエンチャー）が結晶中にわずかでも生成すると、分子が規則正しく配列した単結晶中では数多くの蛍光ユニットから発 せられる蛍光エネルギーが効率良くクエンチャーまで移動しトラップされるためだと考えられます。このような高効率かつ高コントラストな蛍光スイッチング分子材料は、高密度光メモリ、バイオイメージング用の蛍光プローブ、および信頼性の高いセキュリティーインクなどの応用を可能とする次世代の分子材料としての有用性が期待されるだけでなく、このような高効率なエネルギー移動は自然界の光合成のシステムを模倣した分子システムとみなすこともでき、学術的にも非常に興味深い結果だと考えられます。
本成果は、英国化学会（Royal Society of Chemistry）の学術雑誌「Chemical Communications」に掲載され、その号の表紙に選ばれました。
