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町田研究室・小山遥加さんの研究がACS Catalysisに掲載されました

自動車排ガスには人体に有毒な一酸化炭素(CO)や環境問題を引き起こす一酸化窒素(NO)など複数の有害成分が含まれており、これらを浄化するために全ての車には三元触媒が搭載されています。車体下の限られた空間において厳しい排出ガス規制をクリアする浄化性能を発揮するためには希少で高価な白金族元素(Rh, Pd, Pt)の使用が不可欠ですが、資源枯渇や価格高騰が懸念されることから汎用元素による代替技術の開発が求められています。そこで当研究室では安価で豊富に存在するFe, Ni, Cuなどの3d遷移金属のみで構成される新規三元触媒の開発に取り組んでおります。

本研究ではAl, Ni, Cuのみで構成される無機固体材料が優れた三元触媒活性を発現すること、また固体表面に形成される擬スピネル型(NiCu)Al2O4の構造および電子状態がNO還元活性を促進する要因を明らかにしました。固体触媒の多くは高温において著しい触媒劣化を引き起こしますが、本触媒ではNi, Cuがg-Al2O3担体と固相反応することで表面に擬スピネル型(NiCu)Al2O4固溶体が形成されます。この時Niが八面体サイトを占有することで相対的にNO還元に有効な四面体サイトのCuが形成され、さらに隣接NiからCuへの電子供与によってCu活性サイトの電子密度が増加することでNO分子への求核攻撃が促進されることを明らかにしました。こうした汎用金属同士の微視的な協奏効果を利用した材料設計により、白金族元素に匹敵、あるいは上回る高機能性触媒の開発が期待されます。

論文URL: https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acscatal.1c01419