お知らせnews

井原研究室・林 榛菜さんが表彰されました!

井原研究室・北村グループ・林榛菜さんが「第58回化学関連支部合同九州大会」において九州分析化学ポスター賞を受賞しました!

~林さんによる受賞内容の説明~

がん患者の血液中には、原発腫瘍組織から剥離し血液やリンパ液の流れに乗って全身を循環するがん細胞(血中循環腫瘍細胞、Circulating Tumor Cell:CTC)が存在しています。CTCは、腫瘍マーカーやCTなどの画像では判断が難しい微小がんや初期フェーズのがん患者においても確認されており、がん診断マーカーとして有用です。しかしながら、血液1 mLあたりにおよそ50億個の血球細胞が存在するのに対し、CTCはわずか数~数十個しか存在しません。そのため、CTCの検出は容易ではなく、前処理として選択的にCTCを濃縮する工程が必要となります。本研究では、がん患者の全血中からCTCの選択的捕捉を試みました。

細胞捕捉の基体として、流れの圧力により開口する金フィルターを用いました。これは、血球細胞(赤血球:直径約8 μm, 白血球:約15 μm程度)より大きいがん細胞(約20 μm程度)の方が残存しやすいように設計しています。

また、多くの固形癌腫にはEpCAMと呼ばれる膜タンパク質が高発現しています。これを認識する素子として、抗体のようにEpCAMと特異的に結合することが可能なDNAアプタマーに着目しました。同フィルターにアプタマーを修飾させることで、サイズ選択的な物理的選別と結合親和性に基づいた化学的選別の二つの要素によりがん細胞が選択的に捕捉されることを期待しました。

本研究では、アプタマーの末端をチオール化し、金フィルタ―上に金−チオール結合を介して修飾しました。作製したフィルターにがん細胞としてMDA-MB453(ヒト乳癌細胞)を、正常細胞としてHEK-293T(ヒト胎児腎細胞)の懸濁液を通液したところ、がん細胞が捕捉されていたのに対し、正常細胞はほとんど捕捉されないことがわかりました。また、実際に食道胃接合部がん患者の血液をフィルタ―に送液したところ、CTCを捕捉することに成功しました。

*本研究は、本学機械数理工学科の中西 義孝 教授、中島 雄太 准教授、消化器外科の馬場 秀夫教授、岩槻 政晃 診療講師、株式会社オジックテクノロジーズ、株式会社若林精機工業との共同研究にて実施されました。