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栗原研究室・碇子壱成さんの研究がThe Journal of Physical Chemistry Lettersに掲載されました!

栗原研究室・碇子壱成の研究がThe Journal of Physical Chemistry Lettersに掲載されました!

碇子壱成さんに研究のご解説をいただきました!

フォトクロミズムとは、ある特定の波長の光を照射することにより色の異なる異性体へと変化し、その異性体に別の波長の光を照射すると元の異性体に可逆的に戻る現象のことです。フォトクロミズムを示す分子のことをフォトクロミック分子といい、一般的にどちらか片方の異性体への光反応には紫外光を用いる必要があります。しかしながら、紫外光は人体に有害であり、生体への透過性が悪いため、バイオイメージングや超解像顕微鏡といった生体系への応用には適していません。そこで我々の研究グループでは、紫外光を用いずにフォトクロミズムを示す分子の開発に取り組んでいます。

その一連の研究の中で、フォトクロミック分子であるジアリールエテン(DAE)に蛍光色素であるペリレンビスイミド(PBI)を連結した分子が、PBIのみが吸収する波長域(500-550 nm)の緑の光と波長600 nm以上の赤の光のみで可逆的なフォトクロミズムを示すことを見出しました。

一般的に、DAEは紫外光および可視光の照射によって、可逆的なフォトクロミズムを示します。これまで、紫外光を必要とせず、可視光のみで可逆的な光反応を示すDAE誘導体が複数報告されているものの、溶存酸素によって反応性が低下するなどの課題が残されていました。そのような中で、我々の見出したDAE誘導体への緑の光照射に対する光反応は、これまでに報告されているようなメカニズムでは説明できないことが分かり、紫外光を必要としないDAEの開発に向けて大きなブレイクスルーになり得ることが期待されました。様々な実験結果と理論計算の結果から、この光反応のメカニズムは、可視光の照射によってPBIの励起一重項状態が生じ、そこからDAEの三重項へと直接エネルギー移動が起こり、生じたDAEの三重項から光反応が進行するという、これまでに報告されている例とは全く異なる新しいメカニズムであることが明らかとなりました。また、この分子は溶存酸素によって反応性の低下は見られず、むしろ反応性が増大することが明らかとなり、これまでの課題を改善することができたといえます。

このメカニズムを基に分子設計を行うことで、将来的には近赤外光のみでフォトクロミズムを示すDAE誘導体の開発が可能になると期待されます。

本成果は、アメリカ化学会(American Chemical Society)の学術雑誌「The Journal of Physical Chemistry Letters」に掲載され、その号の表紙に選ばれました。

 

論文URL: https://doi.org/10.1021/acs.jpclett.2c01903