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井原研究室・田島彩瀬さんが表彰されました!

井原研究室・北村グループ・田島彩瀬さん(修士2年生)がThe 14th International Student Conference on Advanced Science and Technology (ICAST) KumamotoにおいてThe Best presentation Awardを受賞しました!

~田島彩瀬さんによるポスター内容の説明~

がん患者の血液中には原発腫瘍組織から剥離し、血液やリンパ液の流れに乗って全身を循環するがん細胞(血中循環腫瘍細胞、英名Circulating Tumor Cell, CTC)が存在しており、これが転移の要因となっていることが知られております。また、単位血液量あたりのCTC数は臨床ステージと強い相関があり、近年、がんの診断マーカーとしても着目されております。しかし白血球や赤血球などの血球細胞が1 mLの血液あたりに106個程度存在するのに対し、CTCは数個程度と非常に稀少であるため、その検出には、選択的な濃縮法と高感度な検出法を組み合わせて用いることが必要となります。

多くの固形癌種の細胞膜上にはEpCAM(上皮細胞接着分子)という膜タンパク質が高発現しております。EpCAMは血球細胞に発現していないことから、EpCAM結合性分子を利用すればCTCの濃縮や高感度検出が可能になると考えました。

核酸アプタマーは、自身で高次構造を形成することで、抗体のように標的分子を特異的に認識し、結合することが可能な核酸であります。これらは化学合成が可能であること、化学的な安定性が高いことから近年、抗体に代わる分子認識素子として着目されております。本研究では、EpCAMに対するアプタマーの末端をチオール化し、金基板上に金−チオール結合を介してこれらを修飾しました。作製した基板に対してMDA-MB453(ヒト乳癌細胞)、KATOIII(ヒト腎癌由来細胞)、MCF7(ヒト入線癌細胞)ならびにHEK-293T(ヒト胎児由来細胞)の懸濁液(PBS中)やこれらの混合懸濁液を滴下しましたところ、MDA-MB453、KATOIIIなどの腫瘍細胞は基板上に捕捉されていたのに対し、正常細胞であるHEK-293Tはほとんど捕捉されないことがわかりました。血液中からのがん細胞の選択的捕捉など検討課題はまだ残っていおりますが、将来的には、CTCの選択的濃縮に利用できることを期待しております。