エンドトキシン(リポ多糖類、LPS)は、大腸菌などの細菌の細胞壁に存在する高分子で、水道水や蒸留水にも普遍的に存在している。LPSを含む溶液を注射溶液として投与すると、ごく微量でもショック死を起こすなどの副作用があるため、注射用医薬品の製造工程ではLPSの除去が必須となっている。
シクロテキストリン(CyD)は,クルコースかα-1,4 結合した環状オリコ糖てあり、構造の中心に空洞(キャヒティ)をもっている。1分子に含まれるクルコース単位か 6、7、8 個のものは、それそれ α-,β-,γ-CyD と呼はれており、空洞の深さはともに約 0.7 nm たか、内径は 0.45 nm(α 型)、0.70 nm(β型)、0.85 nm(γ型)と異なる。空洞の内面は疎水性て、その大きさに応してさまさまな疎水性物質を包接することかてきる。この包接作用は、生活排水や工業廃水からの界面活性剤やタイオキシンなと環境汚染物質の選択吸着除去に活用てきると期待されている。
我々の研究室ではDNA/LPS混合溶液からのLPS選択的除去のためのシクロデキストリン共重合体粒子の作製を報告した1。シクロデキストリン共重合体粒子は、γ-CyDと1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートの懸濁重縮合によって作製された。作製した共重合体粒子のLPS除去活性は、陽イオン吸着剤であるポリεリジン固定セルファインや疎水性吸着剤であるポリスチレン粒子のそれとバッチ法により比較した。pHとイオン強度を生理的条件下に設定し、DNAとLPSを含む溶液からの吸着の選択性を検証した。疎水性吸着剤、陽イオン吸着剤を用いた場合、LPSとDNAの両方が各々の吸着剤の上へ吸着され、吸着能の選択性が現れなかった。対照的に、γ-CyDのキャビティを有する共重合体粒子では、DNA/LPS混合溶液からLPSのみを選択的に取り除くことができた。疎水効果によりLPSの疎水鎖がCyDのキャビティ内に導入される一方、DNAはCyDキャビティのサイズ排除効果により吸着されないことがCyD共重合体粒子の高いLPS選択吸着性に寄与しているものと考えられる。(図 1)
図1シクロデキストリン共重合体粒子の構造と、シクロデキストリン共重合体粒子によるLPS吸着の模式図
近年、固定化酵素膜をはじめとした基体上への生体活性分子の固定化が学術的、産業的に大きな注目を集めている。固定化酵素は、再利用可能であり、さらに消化溶媒から簡単に取り除くことが可能である。特に回収を容易にする目的で磁性化したナノ粒子、ナノダイアモンド、メソポーラス活性炭、シリカやガラスビーズなどを基体とした固定化酵素が多く報告されている。
酸化グラフェン(GO)ナノシートは高い平面性と高い表面反応性といった特異な性質を持つことから近年、 生化学分野での応用材料として期待されている。我々の研究室では、トリプシンを磁性化GOナノシート上に固定するシンプルな方法の開発を報告した2。まず、Fe3O4ナノ粒子を還元型GO (rGO)シート上へ固定することで、磁性化GOシートを作製した。次に、トリプシンを磁性化GOナノシート上へ共有結合的に固定化した。トリプシンの触媒能は、磁性化GOナノシートの上で固定化しても大きな減少は確認されず、触媒能が維持されていることが明らかとなった。この結果からGOナノシートのプロテオミクスへの応用展開が期待される。
図2(上) 磁性化酸化グラフェンナノシート上へのトリプシン固定化の模式図。(左下) マイカ基板上へ展開したGOナノシートのAFM像。(右下)マイカ基板上へ展開したトリプシン固定化GOナノシートのAFM像。
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