Supramolecular Assemblies & Functional Nanomaterials
Supramolecular Assemblies & Functional Nanomaterials
超分子化学研究室 へ(日本語)
研究・開発
ナノ粒子を複合化させたポリマーハイブリッド材料
ボトムアップ法によるナノ材料の構築において、諸条件を精密に制御することで、サイズや形状の整った微粒子を作製することができる。シード重合やミセルを用いた方法により、単分散なナノサイズの無機粒子を作製することができる。1nmから100nmの範囲はブレイキングダウン法による形状制御の下限と分子サイズの上限との境界領域として、非常に興味深いレンジである。1nmから100nmの範囲のナノ粒子は、体積に対する面積が大きく、その表面の構造や機能は非常に重要である。
われわれは、ナノ微粒子とポリマーを組み合わせた新しい材料の開発を行っている。たとえば、磁性ナノ粒子の表面にポリマーをグラフト化させた複合体を作製し、工学、環境などの分野への応用を目指した研究を行っている。磁気誘導を利用することで金属イオンの選択的分離や薬物のキャリア(DDS)、ハイパーサーミア(癌の温熱療法)への応用が可能となる。
研究テーマ
1)マグネットフェクション用ポリマーグラフト化磁性ナノ粒子
〜磁気を利用した細胞へのDNA導入手法の開発〜
2)ナノ微粒子をマルチ架橋点とするハイドロゲルの簡易調製法の確立
3)多糖(セルロース)でコートした磁性ナノ粒子ハイブリッドの作製
〜生体親和性界面を有する磁性ナノ粒子の創成とその医用分野への展開〜
4)シクロホスファゼンをコアとする光応答性有機-無機分子ハイブリッドの創成
5)シクロホスファゼンへのアミノ酸の集積化と光学認識への応用
ナノ粒子架橋型ハイブリッドゲル
ハイドロゲルは、ポリマー鎖の化学的あるいは物理的な架橋により形成されるネットワーク空間に水分子が取り込まれることで形成される。ポリマー鎖の絡まり合いや、多官能性分子による共有結合、金属錯体形成を介した架橋によりネットワークが形成される。つまり、ゲルはネットワークを形成するファイバー構造とそれをつなげる架橋構造により構成されている。
ナノ粒子架橋型ハイブリッドゲルは、ナノ粒子を架橋点とするハイブリッドハイドロゲルであり、側鎖に反応性基を導入したコポリマーの水溶液とナノ粒子水分散液を混合し、静置するとハイドロゲルが形成される。ナノ粒子は、分子架橋剤よりサイズが大きいためポリマーとの反応が比較的緩やかに進行し、ナノ粒子の濃度やサイズを変えることでゲル化時間が数分から数時間の範囲で変わる。ナノ粒子を架橋点とするハイブリッドハイドロゲルは、エラスティックな性質を示し、80~90%圧縮変形しても破壊されることはなく、応力を取り除くと形状が回復する。
ナノ粒子架橋型ハイブリッドゲルは、反応性コポリマーの重合度、反応性基の導入率、濃度およびナノ粒子のサイズ、濃度などによりネットワーク構造を自在に制御できるため、ゲルの特性を自由にコントロールすることができるだけでなく、コモノマーやナノ粒子の種類を自由に選択することができる。また、 未反応のモノマーや開始剤を含まない、2液混合後、放置するだけでゲルを作製できるなどの特徴がある。
関連論文
1) Strategy for preparation of hybrid polymer hydrogels using silica nanoparticles as multifunctional crosslinking points
Chemical Communications, 47, 1024-1026 , 2011.
M. Takafuji, S. Yamada, H. Ihara.
2) Programmable responsive shaping behavior induced by visible multi-dimensional gradients of magnetic nanoparticles
Soft Matter, Vol.8, pp.3295-3299, 2012.
Y. Liu, M. Takafuji, H. Ihara, M. Zhu, M. Yang, K. Gu, W. Guo
3) Peculiar Nanocomposite Hydrogel with Controllable Multiple Thermosensitivity: Double Phase Transition and Ternary Stable States
Chemical Communications, Vol.46, pp.430-432, 2010.
Y. Liu, X. Liu, Y. Wu, B. Sun, M. Zhu, M. Takafuji, H. Ihara.
ナノ粒子を架橋点とするハイブリッドハイドロゲルは、透明性が高く、弾性的性質を示します。圧縮率80%まで圧縮しても(右図)、応力を取り除くと元の状態(左図)に戻ります。
ポリマー固定化磁性ナノ粒子
ナノ微粒子とポリマーを組み合わせた新しい材料の開発を行っている。たとえば、磁性ナノ粒子の表面にポリマーをグラフト化させた複合体を作製し、工学、環境などの分野への応用を目指した研究を行っている。磁気誘導を利用することで金属イオンの選択的分離や薬物のキャリア(DDS)、ハイパーサーミア(癌の温熱療法)への応用が可能となる。
関連論文
1) Surface charge controlled magnetic nanoparticles with grafting of poly(4-vinylpyridine).
Journal of Nanoscience and Nanotechnology, Vol. 5, No. 3, pp. 394-397, 2005.
Makoto Takafuji, Takamasa Mimaki, Zhenghe Xu, and Hirotaka Ihara.
2) Preparation and characterization of poly(1-vinylimidazole)-grafted magnetic nanoparticles.
Chemistry of Materials, Vol. 16, pp.1977-1983, 2004.
Makoto Takafuji, Shunichi Ide, Hirotaka Ihara, Zhenghe Xu.
ポリマーを界面にグラフト化したナノサイズ(5 nm)の磁性粒子の電子顕微鏡写真。
ナノ粒子シェルレイヤーをもつコア・シェルマイクロ粒子
ナノ微粒子とポリマーを組み合わせた新しい材料の開発を行っている。たとえば、磁性ナノ粒子の表面にポリマーをグラフト化させた複合体を作製し、工学、環境などの分野への応用を目指した研究を行っている。磁気誘導を利用することで金属イオンの選択的分離や薬物のキャリア(DDS)、ハイパーサーミア(癌の温熱療法)への応用が可能となる。
関連論文
1) Facile and versatile method for preparing core-shell microspheres with controlled surface structures based on silica particles-monolayer.
Materials Chemistry and Physics, Vol. 129, Iss 3, pp. 871-880, 2011.
A. Uchimura, S. Kubota, S. Yamada, T. Wakiya, M. Takafuji, T. Shirosaki, S. Nagaoka, H. Ihara.
2) A facile preparation method for self-assembled monolayers with silica particles on polystyrene-based microspheres.
Materials Chemistry and Physics, Vol.114, pp.1-5, 2009.
H. Ihara, S. Kubota, A. Uchimura, Y. Sakai, T. Wakiya, M. M. Rahman, S. Nagaoka, M. Takafuji.
ポリマーを界面にグラフト化したナノサイズ(5 nm)の磁性粒子の電子顕微鏡写真。
自己組織性分子集合体
分子が自己集合的に配向会合することで形成される超分子集合体に関する研究は、1980年代から始まっている。生命に見られる多くの分子は、相互認識により高度な三次元集合構造体を形成している。相互作用部位や分子パッキングなどを考慮し分子設計した分子を有機合成的手法で作製すると、生体分子に類似した集合構造体を形成する場合がある。このような集合体を利用して、生体に類似した機能を人工的に再現することができる。
分子が組織的な集合構造を形成することで、分子の機能を足し合わせた以上の機能を発現する場合があり、これは超分子集合体と呼ばれるが、われわれはこの超分子集合体の中でもナノサイズの一次元分子集合体の研究を行っている。例えばナノファイバー、ナノラセン、ナノリボンなど、特殊な分子が創りだすユニークな分子集合体は、その形態的な興味の他に光学活性の増幅という特殊(キラル)な分子配向に基づく機能を発現する。これらの機能や形態を利用することで、光学素子、分子認識素子、ナノ材料などへの応用を目指した研究を行っている。
研究テーマ
1)自己組織化ナノファイバーを内包した光学活性ポリマーフィルムの開発
2)ホストーゲスト化学を利用した光学活性の制御
3)カチオン性ナノファイバー状分子集合体を用いたDNAトランスフェクションへの応用
共同研究(インド_CCMB)
4)自己再生性オルガノゲル
超分子ナノファイバー組み込みポリマーフィルム
我々は、分子が自己集合することで形成されるナノ繊維をポリマーフィルム中に埋め込むことで、溶液中で発現していた構造や機能を固体中に封じ込めることに成功した。
例えば、蛍光性部位を導入した自己集合性分子は、ナノ繊維を形成し配向会合することでエキシマーを形成する。そのナノ繊維をポリマー中に埋入することで、エキシマー発光するポリマー複合フィルムが得られる。自己集合化ナノ繊維に静電相互作用を介して色素分子を結合させることで、容易に波長(色)や強度を変えることも可能であり、また発光性、円二色性など特殊な光学特性をポリマーフィルムに付与することができる。
関連論文
1) Stabilization of enhanced chirality from pyrene-containing L-glutamide lipid in methyl methacrylate by photo-induced polymerization.
Chemical Communications, pp.1122-1123, 2004.
Makoto Takafuji, Arata Ishiodori, Taisuke Yamada, Toshihiko Sakurai, Hirotaka Ihara.
2) Optical Active Polymer Film Tuned by Chirally Self-assembled Molecular Organogel.
Tetrahedron, Vol.63, pp.7489-7494, 2007 (ChemInform, Vol.38, Issue 39, Date:September 25, 2007)
M. Takafuji, Y. Kira, H. Tsuji, S. Sawada, H. Hachisako, H. Ihara.
3) Enclosure of Secondary Chirality Based on Highly-Oriented Lipid Aggregates into Polymer Sheet by Photo-Induced Polymerization of Polymerizable Monomer Gels
Macromolecular Symposia, Vol.291-292, Issue 1, pp.330-336, 2010.
M. Takafuji, Y. Kira, A. Ishiordori, H. Hachisako, T. Sawada, H. Ihara.
繊維状自己集合体を埋め込んだポリマーフィルム(左図)とフィルム内部構造の模式図(右図)を示した。
発光性部位の配向によるエキシマー発光が観察される。
超分子集合体による分子認識システム
生体内の分子は、その立体的構造に巧みに相互作用部位を配置している。自分の手形に自分の手がぴったりと一致するように、特定の分子を認識する。光学活性分子などの立体異性体や構造類似体を精密に認識しすることができる。多糖やペプチドなどの生体高分子の高次構造を利用した光学分離剤が実用化されており、種々のキラル分子を認識することが確認されている。
われわれは、配向性分子材料を用いて、新しいタイプの分子認識剤の開発を行っている。配向した分子は、ゲスト分子に対して、センシティブに構造を変化させることは知られている。規則的に配列した官能基を利用することで、精密な分子認識が可能であると考えている。
関連論文
1) Organic thin layer of molecular gel-forming glutamide lipid on silica particles for practical application to molecular recognition.
Chemistry Letters, Vol.41, pp.181-183, 2012.
M. Takafuji, T. Charoenraks, J. Izumi, H. Ihara
2) Evaluation of selectivity for l-glutamide-derived highly ordered assemblies in reversed-phase high-performance liquid Chromatography.
Talanta, Vol.77, p.1228-1237, 2009.
M. Mizanur Rahman, M. Takafuji, H. Ihara.
3) Retention mechanism of l-glutamide-derived noncrystalline stationary phases in reversed-phase high-performance liquid chromatography and application for separation of nucleic acid constituents.
Journal of Chromatography A, Volume 1119, Issues 1-2, pp.105-114, 2006.
M. Mizanur Rahman, Makoto Takafuji, Hirotaka Ihara.
4) Enhanced molecular shape selectivity through multiple carbonyl-pi interaction with noble non-crystalline solid phase for RP-HPLC.
Analytical Chemistry, Vol.77, pp.6671-6681, 2005.
M. Mizanur Rahman, Makoto Takafuji, Hamid R. Ansarian, Mahnaz Derakhshan, Hirotaka Ihara.
5) Dioctadecyl L-glutamide-derived lipid-grafted silica as a novel organic stationary phase for RP-HPLC.
Journal of Chromatography A, pp.223-228, Vol.1074, 2005.
Makoto Takafuji, M. Mizanur Rahman, Hamid R. Ansarian, Mahnaz Derakhshan, Toshihiko Sakurai, Hirotaka Ihara.
精密分子認識システム
生体内の分子は、その立体的構造に巧みに相互作用部位を配置している。自分の手形に自分の手がぴったりと一致するように、特定の分子を認識する。光学活性分子などの立体異性体や構造類似体を精密に認識しすることができる。多糖やペプチドなどの生体高分子の高次構造を利用した光学分離剤が実用化されており、種々のキラル分子を認識することが確認されている。
われわれは、配向性分子材料を用いて、新しいタイプの分子認識剤の開発を行っている。配向した分子は、ゲスト分子に対して、センシティブに構造を変化させることは知られている。規則的に配列した官能基を利用することで、精密な分子認識が可能であると考えている。
研究テーマ
1)超分子集合体の無機微粒子界面への集積固定化とそのキラル分子認識
〜光学分割剤への応用〜
2)配向性分子材料の無機微粒子への固定化と精密分子形状認識
〜環境ホルモン類、核酸塩基類の精密分離への応用〜
3)ラセン高分子のヘリカル構造の反転メカニズムの解明
共同研究(フランス_CNRS)
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